凪君は私の隣で笑わない
said NAGI
HRが始まったというのに、いつまで経っても美優の席が埋まらない。
なにかあったのか。
凪は無性に不安になる。
美優のこととなると、自分でも信じられないくらい、心配性になるようだ。
一度嫌なことを思い浮かべれば、それが止まらない。
すると、凪のスマホにメッセージが届いた。
美優の連絡先を知っているわけではないのに、なぜか美優からだと思って携帯を開く。
そこには、縄で手首を後ろで縛られ、古いソファの上で寝かされている美優の写真が。
端に見える床からして、どこかの倉庫だろう。
今朝一緒に来たせいで、また美優が自分の喧嘩に巻き込まれたか。
そう思うと、気が気でない。
そして、さらにメッセージが届いた。
『相川美優を返してほしければ、今すぐ来い』
そのメッセージの下には住所が示されている。
HRが終わった瞬間、凪は教室を出ようとした。
「黒羽!美優、どこにいるか知らない?」
そう引き止めたのは、灯だ。
心配そうに眉を下げている。
「俺のせいで捕まった。今から取り返してくる」
凪は早く行きたかったため、説明不足とわかっていたため、灯の言葉を待たずに学校を出た。
いったい、誰が美優を捕まえたのか。
美優に怪我を負わせて以来、喧嘩はしないようにしてきたのに。
どうして、今さら。
自分の不甲斐なさを責めながら、美優の元へと向かった。