凪君は私の隣で笑わない
指定された場所は、やはり倉庫だった。
影から様子を見る。
出入り口には見張りが十数人。
これだけ立派に見張りがいるなら、どこかの不良グループが犯人かもしれない。
となると、拳銃を持っている可能性も出てくる。
自分が怪我をするのは問題ないが、美優にまた怪我をさせるのが、一番よくない。
死んでも、美優に傷を作らないよう、救出しよう。
そう心に誓い、凪はあっさりと見張りを倒した。
そして中に入ると、三十人以上の敵。
奥にあるソファの上には、まだ眠っている美優と、見覚えのある男が座っている。
「お前……!」
「覚えててくれたんだね、黒羽凪。僕は橘翔空(たちばなとあ)。まあ、名前は知らなくとも顔くらいは覚えてるか。昔、この子を切った犯人の顔だもんね」
凪は異常な怒りに狂い、次々と敵を倒していく。
気付けば残りは翔空のみ。
「さすがだね、黒羽凪。やっぱり君相手に金で集めた奴らじゃ適わないか」
翔空は目を覚まさない美優の首根っこを掴み、立ち上がる。
美優を取り戻そうと、凪は一歩踏み出す。
しかし、翔空が美優のこめかみに銃口を向けたことにより、下手に動けなくなった。
「彼女を殺されたくなかったら、大人しく……そこで苦しめ」
その言葉とともに、凪の左足が撃たれた。
凪はなんとも言えない痛みにより、叫んでしまう。
すると、その声で美優が目を覚ました。
「凪……君……?」
目の前にはうずくまり、足から血を流している凪がいるのだから、美優は当然混乱している。
どうして今、目覚めたんだ……
何を言おうにも、痛みが勝ってしまい、言葉にならない。