凪君は私の隣で笑わない
said NAGI
戻りにくかったからという理由で一時間目をサボった。
休み時間に教室に戻ると、今朝黒板の前に立っていた女子生徒が静寂の中、言葉を発した。
そして、凪の目の前に立つ。
少し目線をずらせば、オロオロする美優が目に入った。
どうして、そんな顔をするんだ。
凪は灯の手を払い、自分の席に着いた。
「もう少し優しくしてやろうとか思わねえのか、アイツ」
「無理だろ。アイツには人を思いやる心とかないんだから」
周りの男子が、わざとらしく言う。
それを、一人の男子生徒が止める。
「やめとけ。殴られるぞ」
馬鹿にされたくらいで、殴れるか。
喧嘩ばかりするとか、すぐ暴力に走るとか噂されているが、実際に凪から喧嘩を売ったことはない。
すべて、相手から仕掛けられたこと。
そして、全勝。
凪が喧嘩に負けたことは、今までたったの一度しかない。
「くそっ……さっさと退学しろよ」
止められた男子は、さっきよりしっかりと凪に聞こえるように言った。
だが、凪はそれだけは絶対にしない。
ここの授業はわかりやすいし、なにより美優がいる。
美優のそばにはいられないが、美優を見かけられないのは嫌だ。
つまり、美優が好き。
そんなこと、小学生のころから自覚している。
だからこそ、今こうなってしまっている。
美優は小六のとき、クラスメイトからいじめられていた。