凪君は私の隣で笑わない
昔は明るくて笑顔の絶えない子だったから、それなりにモテていた。
だから、男子は好きな子をいじめてしまうという、くだらないがよくある理由でいじめた。
そして、それが面白くない女子が、さらに美優をいじめる。
そんな悪循環の中、美優に救いの手を差し伸べたのが凪。
凪は好きな人が傷つくほうが嫌だったのだ。
すると、翌日からは凪がターゲットとなった。
女子はもう、ただ便乗しているだけだった。
美優は凪がいじめられるようになったのは自分のせいだと思ったのか、何度も助けようとしてくれた。
だが、凪は美優から話しかけられても無視をした。
ここでまた美優と仲良くしてしまうと、美優がいじめられてしまう。
そう思うと、話したくても話せなくなってしまったのだ。
小学生のいじめだから、飽きたら終わり。
だが、いじめっ子と再び仲良くなるということはなかった。
凪はどんどん一匹狼となっていった。
中学に上がると、ありもしない噂が次々と流れた。
その結果、毎日のように上級生や他校生に喧嘩を売られていた。
そして、事件は中一の二学期の初めに起きた。
その日の帰り道、いつものように喧嘩を売られた凪は、裏路地で喧嘩をしていた。
確か、相手は十人以上だったか。
少し相手が有利だったが、なんとか勝利が見えてきたとき。
「凪君……?」
ここで聞けるはずのない、美優の声が耳に入った。
「なんで……」
「物音がした気がして……凪君、また喧嘩……?」
美優の悲しそうな顔を見ると、もう誰も殴れなくなった。