星空を見上げて

圭介side

新城建設本社内にある休憩室で俺はコーヒーを飲んでいた
会議が始まるまでまだ時間がある
今は会議のことを考えないといけないのだがアタマは瞳のことでいっぱいだった
原因は昨夜の彼女の言葉だ

記憶を取り戻すキッカケが見つかるかと思い、誘った今回の東京出張


”思い出したいけど思い出したくない”


「まさかそんな風に思っていたとは」

一緒に連れてきたのはマチガイだったか?
早く思い出してほしいと思っていたがまだ時期早かったのか

昨夜、本音を話す彼女に俺は何て言っていいのか分らなくて
ありがちな言葉を口にしてしまっていた
もっと気のきいたことを言ってやれればいいのだが
こと仕事以外では上手くいかない

温くなったコーヒーを飲んでいるとケータイが着信を知らせた
画面を見てみると相手は今まさに考えていた彼女からだった

”今電車に乗ってスカイツリーに向かってます”
と、写真つきのLINEが送られてきた

写真を見ていると自然と顔が緩む、彼女に癒される
この先もずっと一緒に居られたら・・居られるのか?

俺は頼れるものがいない彼女に住む場所を提供しているだけ
全て思い出せば彼女は元の生活に戻っていくのだろう
その時俺は笑顔で送り出せるのか?
そんな事を考えていると足音が近づいてきた

「新城さんそろそろ始まります」

「分った、今行く」

飲み終えたコーヒーのカップをぎゅっと握りつぶしゴミ箱に放り投げると
会議室に向かった


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