星空を見上げて

圭介side

「支社長どうされました?」と言う秘書の浅野の言葉で我にかえった
どうやら俺は仕事の手をとめて考えこんでいたようだ

「いや何でもない」

何でもない訳ない
家に残してきた葵のことが気になって仕事に集中できない
ちゃんと食事は食べたのか、薬は飲んだのか
大人しく寝ているのか気にするとキリがない

ホントはいますぐ帰りたいところだが仕事を投げ出す訳にはいかない
せめて電話して声を聞きたいが寝ていたら起こしてしまうことになる
こんな時姉きが居てくれたら・・

「浅野」

「はい」

「今日は急ぎの仕事優先でそれ以外は明日以降に回してくれ、定時で上がる」

「承知しました」

そう言うとすぐに電話をかけ始めた浅野
俺がどんなに無理を言っても上手く調整してくれるので助かる

普通ならここで理由を聞いてくるのだが浅野は逆で全く聞いてこない
それはプライベートに関しても同様だ
ここまで徹底しているのは今時珍しいがこっちとしては有り難い
以前の秘書はあれこれ聞いてきたからな

とにかく浅野に任せれば今日は定時で上がれる
そう思い、俺は引き続き机の書類に向き合った


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