星空を見上げて
あの日から数日は何事もなく過ぎていった
いつものように家の事をしていると電話が鳴った
出ると1Fのコンシェルジュからだった
お客様が来ているが通しても大丈夫かの確認だった
名前を聞くと花井梓さんだった
家には入ってほしくなかったので1Fで待っていてもらうようにお願いし
急ぎ1Fに降りていった
1Fはフロントの他にカフェスペースもあり彼女はそこにいた
「お待たせしました、それでお話とは何でしょうか?」
「彼と別れて」
「え?」
「聞こえなかったの!?圭介さんと別れてって言ったのよ」
「言っている意味が分りません」
「アタマ悪いんじゃないの?アナタなんかと彼が釣り合う訳ないわ
彼にはね私みたいな人間が似合っているのよ」
「アポも取らずに仕事中の彼に会いにいくことは
大人のすることではないと思いますが」
カッと顔を赤くした梓さんは
「何よ圭介さんに守られているからって偉そうに!」
目を逸らしたら負けだと思い彼女をじっと見ていると
彼女のほうから目を逸らした
「アナタの親、交通事故で死んだんですってね
高校まで親戚の家で過ごしたんでしょ?
どうやって彼に取り入ったのかは知らないけど
身よりのないアナタが彼の隣にいても彼にはプラスにならない
彼のためを思うならさっさと婚約を解消して出て行きなさいよ」
どうしてそこまで言われなくちゃいけないの?
それに身辺調査までしてたなんて
「とにかく忠告したからね」
そう言い捨てると彼女は足早にマンションを出ていったが
私は暫くの間そこから動けなかった