星空を見上げて

・・・・・

「では日下部さんのアメリカ転勤を祝ってかんぱーい」
かんぱーいとあちこちでグラスが鳴った

表向きは送別会だがいつもの飲み会と変わらない気がする
それでも俺の前には人がひっきりなしにやってきてビールを注いでいく
しかしそれも最初のうちだけでまわりは違う話で盛り上がっていた
俺はため息をつくといったん席を外した

店の奥で椅子に腰かけていると名前を呼ばれた
振り向くと野村香織さんがいた

同じ営業課所属でよく俺のアシスタントを買って出てくれた
そのおかげで仕事がスムーズに進んだことも少なくない
お礼として時々お昼を御馳走したことはあったが

「少し話してもいいですか?」

「何?」

「私、初めて会った時から日下部さんのことが好きでした
日下部さんに恋人がいるのは知っていたので一度は諦めるつもりだった
でも彼女さんと別れたって聞いて」


「たしかに別れた
でもだからといってすぐには次って考えられないんだ
それぐらい好きだったから」

「待ってちゃダメですか?
いつかその人のこと思い出としてみれるようになったら
その時は私のこと考えてくれませんか?」

俺は野村さんをみると口をひらいた

「はっきり言うと今のところ彼女以外は考えられない
だからアメリカに行ったら当分は仕事を優先したい
余裕ができれば仕事以外のことも考えられるだろうけど
いつになるか分らないしこの先どうなるかも・・

君は待つと言ってくれてるけどどのくらい待たせるか分らない
だから待っててほしいとは軽々しく言えない」

「だからごめん、待たないで」


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