星空を見上げて

ホテル最寄りの駅から池袋方面行きの電車に乗り込む
平日なのでいつもなら混むはずが時間が少し遅かったので
思ったより混んでいなかった

空いている席に2人で座ると
まわりに居る女性たちがこっちを見ているのに気がついた
正確には私ではなく圭介さんを見ているのだが

今日の圭介さんはグレーのVネックセーターに細身の黒のチノパン
セーターの上には黒のメンズテーラードジャケットを羽織っている
足元は革靴、腕にはブランドものの時計をしている

普段は固めて後ろに流しているちょっと長めの前髪はラフに下ろしている
そして仕事中はメタリックフレームの眼鏡だけど
今日は黒のスクエア型セルフレームだ、シャープな印象で彼によく似合っている
更には190近い身長も相まってモデルのようだった

こんな男性が近くにいたら女性なら皆、振り返らずにはいられないだろう

それに引き換え
私はネイビーのニットワンピと黒のタイツに黒のショートブーツ
キャメル色のコートという平凡な服装 地味だ物凄ーく地味だ

近くにいたオンナのコ達はひそひそ喋りながらこっちを見ているが
圭介さんはまったく気にしていないようだ
逆に私に向けられる目は「何でアンタなの?」という視線、居たたまれない

そおっと彼から離れようとするとぐっと肩を抱かれ引き寄せられてしまった
その動作にもまわりの女性たちからはため息がもれる

「離れるな」
そう言われ見つめられると何も言えない

さっきよりも密着したカラダに顔が火照ってしまう
早く駅に着かないかなーとそわそわしながら私はまわりの視線に耐えていた


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