星空を見上げて
・・・・・
ホテルのレストランで食べた食事は美味しかった、と思う
さっきのことがアタマから離れずにいたため
味まではよく分らなかったからだ
レストランを出たあとは部屋に戻るのかと思ったら
圭介さんにホテルのバーに誘われた
ピアノの生演奏が控えめに流れ、少し落としぎみのオレンジの照明が落ち着く
席につき、オーダーした飲み物を飲んでいるとさっそく聞かれた
「どうした?」
「え?」
「心ここにあらずといった感じだな、何を考えている?」
「あの言葉を思い出していました」
「?」
「何か思い出すキッカケが見つかるかもしれないって・・
不安なんです、その時の自分を想像すると」
「思い出すのが怖いのか?」
「始めの頃は早く思い出したいって思ってた、でも今は迷っているんです
思い出すと今の自分が消えてなくなりそうで」
「・・」
「思い出したいけど思い出したくない」
涙目になりながら今自分が感じていることを吐き出した
「不安になるのは分る、でもずっとこのままでいるわけにもいかないだろう
瞳の家族や友人は今も瞳の事を探しているんじゃないか?」
「そうでしょうか」
「あまり深く考えすぎるな、何があっても俺は傍にいるから」
傍にいる・・・
その言葉に彼を見ると目を細め、優しく私の頬をなでた
「もう時間も遅い、部屋に戻って休もう」
そう言って私たちはまだ人で賑わうバーをあとにした