aventure
桜智は生活必需品などを買って
家具を受け取り
鴻が夜に部屋に来た頃には
それなりに人の住める状態になっていた。

「どう?気に入ってくれた?

今日3回も買い物に行っちゃった。」

桜智はクレジットカードの明細をカードと一緒に鴻に渡した。

「割と堅実なんだね。」

「もっと使って良かったの?」

「もっと使うと思ってた。」

桜智はまだそんなに大金を使う事を知らない。

それがまた鴻には可愛く感じた。

「お腹空いた。」

「食事に行こう。
着替えておいで。」

桜智は着替えて来ると鴻の腕に自分の腕を絡めた。

「じゃあ行きましょう。」

鴻は少し戸惑っていたが
悪い気はしなかった。

「私たちってどう見えるかな?」

「父と娘ってとこかな?」

「やっぱり恋人には見えないかな?」

「見えないよ。」

そんな事を言いながら
近くのイタリアン料理の店に入った。

「桜智の嫌いな物は何?」

「特に無いけど…アンチョビはあんまり得意じゃない。」

「なるほどね。

ワイン飲んでみる?」

「うん。」

鴻はまだお酒の味がわからない桜智に
渋みのない甘めのワインを選んだ。

鴻はそのうち桜智が一人でメニューを決め、
お酒を選ぶようになる日が来る事を思って
少し寂しくなる。

今は束の間の時で
いつまでもこの無邪気で若く可愛い彼女を縛っておけない事を知ってる。

桜智の前にいつか桜智と同じ年くらいの男が現れて
いつか桜智をさらっていくと思うと
自分の年を呪いたくなった。











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