aventure
次の日大学に行くとまた波瑠が桜智を待っていた。

「あ、先輩…」

「食事は済んだ?」

「いえ、学食で食べようかと。」

波瑠は桜智の手首を掴むと

「じゃあ一緒に食べよう。」

と大学の外のカフェに桜智を連れて行った。

「ここのローストビーフサンドが上手いんだ。」

「じゃあそれで。」

波瑠は桜智をじっと見つめて聞いた。

「今夜時間ある?

一緒に飲みに行きたい。」

桜智はまだよく知らない男の人とお酒を飲むことに抵抗を感じていた。

「あの…先輩…どうして私なんですか?」

波瑠は何と答えようか少し頭を整理してから答えた。

「君のこと知りたいと思って。」

「どうして?」

「気になるから。」

波瑠の澄んだ瞳が桜智には印象深かった。

悪い人じゃない気がして
桜智はその夜飲みに行く事を決めた。

「サッちゃんは何を勉強してるの?」

「文房具とかのデザインに興味があって。」

「へぇ。田舎はどこ?それとも実家から通ってるの?」

桜智は鴻とのマンションを秘密にしたかった。

「実家です。横浜から通ってて…」

「横浜か。良いところだよね。」

桜智は母と住んでいた実家の話をした。

「お父さんは何してる人?」

「え?あー、父は食品会社に勤めてて…

でも母とは2年前に離婚したんです。」

波瑠は少しだけ桜智に同情した。

親の離婚はきっと桜智を深く傷つけただろうから。

父親が居ない寂しさで鴻を求めたのかもしれないと思ったりした。



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