aventure
初めて見たレセプションパーティーは20歳の桜智には見たこともない煌びやかな世界だった。

男性も女性も正装で
高価そうな料理とお酒が並び
桜智も化粧をして髪をアップにし、
胸の開いたドレスを着てカクテルやワインをトレイに乗せ、客に好きな飲み物を取ってもらう。

順調に仕事の時間は過ぎていったが
1人の男に呼び止められ、桜智に注文してきた。

「あ、そこの君、
チェイサーをもらえる?」

「チェイサー…ですか?」

チェイサーが何の事だか分からなかった桜智はしばらくそこで考えて

「すぐお持ちします。」

と分かる人に聞きにいこうとした。

でもみんな忙しくしていてなかなか聞く人が捕まらない。

そんな時、1人のステキな紳士に声をかけられた。

「何かお困りですか?」

「え?…あ、はい?でも…」

お客様にそんなことを聞いて良いのか桜智は迷ったが
そんな桜智をその紳士は優しく諭した。

「大丈夫。恥ずかしがらずに聞いて。
お酒のことなら君よりは多分詳しいよ。

わからなくて困ってるみたいだったから。」

このままお客様を待たせるのも良くないと思って
桜智は紳士に聞いてみることにした。

「あの…チェイサーってどんなお酒でしょうか?」

桜智がそう聞くと紳士は笑って答えた。

「チェイサーはね、そうだな、

ここにある水をグラスに入れて持っていけば大丈夫です。」

「え?お水ですか?」

「そう。

アルコール度数の高いウィスキーなんかを飲んだ時に追いかけて飲む物をチェイサーっていうんです。

大抵は水で大丈夫ですよ。

水以外なら多分本人が飲む物を指定して言って来ますから。」


「あ、ありがとうございます!」

桜智は急いで水の入ったグラスを先ほどの男のところに持っていった。

「あぁ、ありがとう。」

ホッとしてると真緒が近くに来て桜智に声をかけた。

「大丈夫?」

「うん。

チェイサーがわからなくてお客さんに聞いちゃった。」

「チェイサー?何それ?

私もさ、なんだか分からないカクテルの名前言われて困っちゃった。

あるもの飲めっつーの!

にしてもすごいパーティーだよね。

お酒の数も半端ないし、お料理もすごい。

なのにコンパニオンの数が圧倒的に足りてない気がするよー。

にしても若くていい男は本当に居ないね。」

真緒はそう言ったけど…
桜智はさっきチェイサーを教えてくれたあの紳士に少しだけときめいていた。

年は父親ほど離れているだろうけど…

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