aventure
略奪
桜智を抱いてすぐに帰ってしまう鴻を見送る。
毎回がこの繰り返しになった。
1人になると急に寂しさが押し寄せる。
たまには泊まって行って欲しいけれど
断られるのが怖くてそれを口に出来ない。
所詮鴻にとって桜智との関係は金銭が絡んだ契約に過ぎない。
桜智は鴻が帰った後の1人のガランとした部屋が嫌いだ。
もし鴻じゃなくて大学生のあの川上颯斗だったら
泊まってくれるんだろうと思うと桜智は切なくなった。
そんなことを考えてると
その颯斗を名乗る波瑠から電話がかかってきた。
「サッちゃん、何してた?」
桜智は実に正直に答えた。
「先輩、今…本当にね、先輩のこと考えてたから少しビックリした。」
そんなことを言われたら目的のために近づいたといえ
波瑠だって胸がときめいてしまう。
桜智は素直で可愛い。
逢えば逢うほど惹かれてしまう。
「そんなこと言われたらその気なるよ。」
波瑠はもう少しで桜智を落とせるかも知れないと確信してるものの
桜智を騙しているという後ろめたさみたいなモノを感じるようになった。
それでも鴻から桜智を奪わなくてはいけない。
父が自分より若い女に入れ込むなんて
波瑠には耐えられなかった。
「あのさ…今から会いに行ってもいいかな?」
「でも…もう遅いし…さっき別れたばっかりだし…」
「今日は別れるのが辛かった。
あんなキスしたからかな。」
桜智は顔が赤くなって何も言えなかった。
その沈黙で波瑠は桜智が逢ってくれると確信した。
もう少し押せば桜智は逢ってくれそうだ。
「桜智…会いに行っちゃダメ?」
サッちゃんと呼んでいたのに突然桜智と呼び捨てにされてねだるように甘い声を出す波瑠に
桜智は胸がキュンとする。
桜智はまんまと波瑠の罠にかかった。
「うん。でも…部屋はちょっと…」
「わかった。じゃあ外で逢おう。
マンションに着いたら電話するから出てきて。」
「…うん。」
父と過ごすマンションには上げてもらえそうもないが
とりあえず桜智と一晩過ごす事は出来そうだ。
波瑠が上着を着て出て行こうとすると
玄関で鴻と鉢合わせた。
「波瑠、こんな夜中に何処行くんだ?」
「あー、ちょっと友達に呼び出された。」
「明日にしたらどうだ?」
「いや、ちょっと飲みたいらしくて
相談したいことがあるって言ってたから
話だけ聞いてやりたくてさ。」
波瑠はすぐに嘘がつける。
壊れた家族の前で平気な顔で暮らすには
自分を偽らないとやっていけなかったからだ。
波瑠の日常は嘘で作られていることを
鴻も翠も凪も知らなかった。
「心配しないで。
友達の家で飲むから泊まってくるよ。」
「気をつけてな。」
鴻は波瑠に寛大というより無関心に近かった。
男の子だし、波瑠は現に優秀でしっかりしていたし、
凪を心配するあまり
波瑠の中で起こっていた事を気付く余裕も無かった。
波瑠は昔から心配をかけることもなく
鴻は波瑠ならバカなことはしないと勝手に決めつけているところがある。
波瑠がこれから愛人である桜智を
父から奪おうと思ってるなんて考えもしなかった。
毎回がこの繰り返しになった。
1人になると急に寂しさが押し寄せる。
たまには泊まって行って欲しいけれど
断られるのが怖くてそれを口に出来ない。
所詮鴻にとって桜智との関係は金銭が絡んだ契約に過ぎない。
桜智は鴻が帰った後の1人のガランとした部屋が嫌いだ。
もし鴻じゃなくて大学生のあの川上颯斗だったら
泊まってくれるんだろうと思うと桜智は切なくなった。
そんなことを考えてると
その颯斗を名乗る波瑠から電話がかかってきた。
「サッちゃん、何してた?」
桜智は実に正直に答えた。
「先輩、今…本当にね、先輩のこと考えてたから少しビックリした。」
そんなことを言われたら目的のために近づいたといえ
波瑠だって胸がときめいてしまう。
桜智は素直で可愛い。
逢えば逢うほど惹かれてしまう。
「そんなこと言われたらその気なるよ。」
波瑠はもう少しで桜智を落とせるかも知れないと確信してるものの
桜智を騙しているという後ろめたさみたいなモノを感じるようになった。
それでも鴻から桜智を奪わなくてはいけない。
父が自分より若い女に入れ込むなんて
波瑠には耐えられなかった。
「あのさ…今から会いに行ってもいいかな?」
「でも…もう遅いし…さっき別れたばっかりだし…」
「今日は別れるのが辛かった。
あんなキスしたからかな。」
桜智は顔が赤くなって何も言えなかった。
その沈黙で波瑠は桜智が逢ってくれると確信した。
もう少し押せば桜智は逢ってくれそうだ。
「桜智…会いに行っちゃダメ?」
サッちゃんと呼んでいたのに突然桜智と呼び捨てにされてねだるように甘い声を出す波瑠に
桜智は胸がキュンとする。
桜智はまんまと波瑠の罠にかかった。
「うん。でも…部屋はちょっと…」
「わかった。じゃあ外で逢おう。
マンションに着いたら電話するから出てきて。」
「…うん。」
父と過ごすマンションには上げてもらえそうもないが
とりあえず桜智と一晩過ごす事は出来そうだ。
波瑠が上着を着て出て行こうとすると
玄関で鴻と鉢合わせた。
「波瑠、こんな夜中に何処行くんだ?」
「あー、ちょっと友達に呼び出された。」
「明日にしたらどうだ?」
「いや、ちょっと飲みたいらしくて
相談したいことがあるって言ってたから
話だけ聞いてやりたくてさ。」
波瑠はすぐに嘘がつける。
壊れた家族の前で平気な顔で暮らすには
自分を偽らないとやっていけなかったからだ。
波瑠の日常は嘘で作られていることを
鴻も翠も凪も知らなかった。
「心配しないで。
友達の家で飲むから泊まってくるよ。」
「気をつけてな。」
鴻は波瑠に寛大というより無関心に近かった。
男の子だし、波瑠は現に優秀でしっかりしていたし、
凪を心配するあまり
波瑠の中で起こっていた事を気付く余裕も無かった。
波瑠は昔から心配をかけることもなく
鴻は波瑠ならバカなことはしないと勝手に決めつけているところがある。
波瑠がこれから愛人である桜智を
父から奪おうと思ってるなんて考えもしなかった。