aventure
パーティーでは色んな人が紹介されて
壇上で話をしていた。

桜智には、それを気に留める余裕もなかったが
さっきの男性が紹介されて壇上に立った時、
桜智は自然と男に目が行った。

分からないことをサラッと教えてくれる人だったからカッコよく思えたのかもしれない。

桜智はもともと同じ年くらいの男の子が苦手だった。

奥手な桜智だって何人かの男の子とデートした事はあるけど
みんな頭の中は女の子の身体にしか興味がなくて
楽しかったデートなど一度も無い。

桜智はちょっと前まで大人の落ち着いた男の人への憧れが強かった。

いわゆるファザコンで
父親のことが大好きだったからだ。

そんな父親に母よりもずっと若い、
どちらかと言えば自分と年の近い愛人がいたというのは
桜智にとってかなりの衝撃で裏切られた気分だった。

大人の男も若い男の子も対して違わないと思った。

ちょっと素敵に見えたあの大人の男も
2人きりになったら多分ただのいやらしい男なんだろうか?

桜智はそんな事をふと考えてしまう。

桜智は自分が少しあの男を気にした事を後悔しながら黙々と仕事をした。

それでもたまに男を見かけると目で追ってしまう自分に桜智はまだ気付いていなかった。

時間が経つにつれ、仕事も少しずつ慣れて来たが
パーティーはもう終わりに近かった。

その時、さっきの男が桜智を呼び止めた。

「君、この後少し時間がありますか?」

「え?私ですか?」

「そう。良かったら少しだけ話しませんか?」

突然の誘いに桜智は困惑したが、
もしかしたら少し付き合っただけでお金を貰えるかもしれないと淡い期待を抱いた。

「わかりました。少しなら大丈夫です。」

「じゃあ仕事が終わったら上のラウンジに来て。」

桜智はなぜかその男と逢うことに抵抗を感じなかった。

それが自分の好意からだとは思いもしないで簡単に返事していた。








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