aventure
鴻は波瑠と別れてマンションに入っていく桜智を黙って見ていた。

そして少し遅れて桜智のマンションを訪れた。

桜智は笑顔で鴻を迎えてくれたが
後ろめたいのかいつもみたいに目を合わせなかった。

「桜智…何か隠してることは無い?」

鴻は桜智にそう聞いてみようと思ったが
結局何も聞けずに
桜智を抱きしめた。

さっきまで波瑠とキスしていたと思うと
桜智を憎らしく思う。

鴻はその日、とても桜智を抱く気にはなれなかった。

「鴻さん…今日はエッチしないの?」

「うん、ごめん。疲れてるんだ。

桜智の顔を見たから帰るよ。」

桜智はまだ鴻と一緒に居たくて
鴻の腕に自分の腕を絡めて
柔らかい胸を押し当てる。

鴻はそんな桜智を可愛いと思うが
波瑠との事が頭から離れなかった。

「じゃあ、鴻さんはジッとしてて。

私がしてあげる。」

桜智は鴻のベルトを外して
ズボンのジッパーを下ろそうとする。

鴻はそんな桜智の手を止めた。

「今夜は本当にいいんだ。」

少し寂しそうに桜智は鴻から離れた。

帰ろうとする鴻に桜智が言った。

「鴻さん、今夜はキスもしてくれないの?」

波瑠とキスをしていた唇に触れるのは気が引けた。

「桜智…この前の大学生とはデートした?」

鴻は堪らず桜智に意地悪な質問をしてしまう。

「え?あー…うん。

デートした。この前遊園地に行ったの。

ジェットコースターに乗りたくて…

鴻さんは行ってくれそうに無いから。」

鴻は桜智の表情をジッと見ながら

「キスくらいした?」

と聞いた。

桜智は困った顔をして

「ごめん。」

と素直に謝った。







< 35 / 95 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop