aventure
次の日、鴻は事務所の近くの料亭に波瑠を呼び出した。
波瑠は昨日帰らなかった父に腹を立てていたが
父の前では平然を装っている。
鴻は初めて波瑠の心の闇を見た気がした。
「少し飲むか?」
「じゃあちょっとだけ。」
鴻は日本酒を頼んで波瑠にすすめた。
「大学はもうほとんど行かなくていいんだろう?
時間がある時は事務所に来て雑用でもしないか?
これから働くにあたって役に立つと思うぞ。」
波瑠は父の前ではいつも優等生で
決して嫌だとは言わなかった。
「わかった。
来週から少しずつ顔を出すようにするよ。」
そんな波瑠を鴻は不安に思う。
「波瑠…付き合ってる子とか居ないのか?」
波瑠の顔は一瞬強張ったが
いつものように笑顔で
「居ないよ。」
と否定した。
鴻はこのまま知らん顔で波瑠を許すことは出来ない。
「桜智のことはどこで?」
波瑠はビックリして顔を上げ、漸く鴻の目を見た。
「知ってたの?」
「言っておくが桜智のことは傷つけないで欲しい。」
「親父はどういうつもりであの子と?
俺や凪と年も変わらないだろ?
何であんな若い女…」
感情的になった波瑠とは対称的に鴻は落ち着いていた。
「あの子を放って置けなかった。
帰る家もなく、頼る親も居なくて
助けてあげたかった。」
「助けてあげたかった?
それなら金だけあげれば良かっただろ?」
「そうじゃない。
あの子はお金よりも寄り添える誰かが欲しかったんだ。」
「だから金で囲ってあの子を好きにしてるんだろ?」
「否定はしない。
でも…独り立ち出来るまで助けてあげたいと思ってる。」
波瑠は悔しくて堪らなかった。
金で心まで買ったとしか思えなくて
そんな父をどうしても許せなかった。
「別れてくれよ。
凪がこのこと知ったらどうなると思う?」
鴻は何も言い返せなかった。
「波瑠…信じてくれないかも知れないが…
あの子が独り立ち出来るようになったらかならず自由にする。
愛情は与えるが決して溺れたりしない。
今の桜智には私が必要なんだ。
いいか?もう桜智には手を出すな。
お前が俺の息子だって知ったら桜智はどうなる?
お前がした事を知ったら桜智はかなり傷つくだろう。」
波瑠はもちろん納得できなかった。
「自分が正しいと思ってる?
恥ずかしくないのかよ?」
「恥ずかしいよ。
こんな歳であんな若い子に手を出して…
でも…放っておけないんだ。」
「アイツの事愛してるのかよ?」
「助けてあげたいと思ってる。」
「俺や凪より大切なのかよ?」
「比較の対象にならない。
お前達とあの子への感情は別のものだ。」
波瑠はどうしていいかわからず頭を抱えた。
波瑠は昨日帰らなかった父に腹を立てていたが
父の前では平然を装っている。
鴻は初めて波瑠の心の闇を見た気がした。
「少し飲むか?」
「じゃあちょっとだけ。」
鴻は日本酒を頼んで波瑠にすすめた。
「大学はもうほとんど行かなくていいんだろう?
時間がある時は事務所に来て雑用でもしないか?
これから働くにあたって役に立つと思うぞ。」
波瑠は父の前ではいつも優等生で
決して嫌だとは言わなかった。
「わかった。
来週から少しずつ顔を出すようにするよ。」
そんな波瑠を鴻は不安に思う。
「波瑠…付き合ってる子とか居ないのか?」
波瑠の顔は一瞬強張ったが
いつものように笑顔で
「居ないよ。」
と否定した。
鴻はこのまま知らん顔で波瑠を許すことは出来ない。
「桜智のことはどこで?」
波瑠はビックリして顔を上げ、漸く鴻の目を見た。
「知ってたの?」
「言っておくが桜智のことは傷つけないで欲しい。」
「親父はどういうつもりであの子と?
俺や凪と年も変わらないだろ?
何であんな若い女…」
感情的になった波瑠とは対称的に鴻は落ち着いていた。
「あの子を放って置けなかった。
帰る家もなく、頼る親も居なくて
助けてあげたかった。」
「助けてあげたかった?
それなら金だけあげれば良かっただろ?」
「そうじゃない。
あの子はお金よりも寄り添える誰かが欲しかったんだ。」
「だから金で囲ってあの子を好きにしてるんだろ?」
「否定はしない。
でも…独り立ち出来るまで助けてあげたいと思ってる。」
波瑠は悔しくて堪らなかった。
金で心まで買ったとしか思えなくて
そんな父をどうしても許せなかった。
「別れてくれよ。
凪がこのこと知ったらどうなると思う?」
鴻は何も言い返せなかった。
「波瑠…信じてくれないかも知れないが…
あの子が独り立ち出来るようになったらかならず自由にする。
愛情は与えるが決して溺れたりしない。
今の桜智には私が必要なんだ。
いいか?もう桜智には手を出すな。
お前が俺の息子だって知ったら桜智はどうなる?
お前がした事を知ったら桜智はかなり傷つくだろう。」
波瑠はもちろん納得できなかった。
「自分が正しいと思ってる?
恥ずかしくないのかよ?」
「恥ずかしいよ。
こんな歳であんな若い子に手を出して…
でも…放っておけないんだ。」
「アイツの事愛してるのかよ?」
「助けてあげたいと思ってる。」
「俺や凪より大切なのかよ?」
「比較の対象にならない。
お前達とあの子への感情は別のものだ。」
波瑠はどうしていいかわからず頭を抱えた。