aventure

鴻が家に帰ると翠が珍しく待っていた。

「あなた…話したい事があるの。」

鴻は何も言わずリビングの椅子に座った。

「聞いた話だけど…

あなたが今付き合ってる子は誰？」

鴻は突然何を言い出すのかと思ったが
黙って翠の話を聞いた。

「あなたが祥子の店の近くで
凪と変わらないくらいの若い女の子と歩いてたって聞いたの。」

「…祥子さんから？」

「えぇ。責めてるわけじゃないの。

あなたが誰を好きになろうと自由だから…
でも…援助交際をしてるんじゃないかって言われて…

そう思われるのはあまり良いことじゃないから。」

鴻は深いため息をついた。

「どう思われても構わないよ。」

「本当なの？ホントに援助交際してるの？」

「君には関係ないだろう？

君の男たちの話もお節介に教えてくれる興味本位なヤツがいるが
僕は君が何をしてももう何も言う権利はないし、
気にもならない。

だから君も気にしないでくれ。」

「私は良くても、波瑠や凪の父親がそんな人だと思われたら嫌だと思うからよ。」

「君には波瑠や凪のことを心配する資格はないよ。」

鴻はそう言うと席を立った。

翠は何も言い返せず
ワインをグラス一杯に注ぐとそれを一気に飲み干して
グラスを床に投げつけた。

グラスの割れる音は鴻にも聞こえたが
鴻がそれに反応する事はなかった。