aventure
愛するが故
次の日桜智は波瑠に呼ばれて
近くのカフェで逢った。

「ここで土下座する?」

波瑠は最初からとても意地悪だ。

「マンションは無理です。」

「どうしても?」

「はい。」

「じゃあここで?」

桜智は立ち上がり歯を食いしばって座ろうとした。

波瑠は咄嗟に桜智の腕を掴んで椅子に座らせた。

「ここでそんな事されたら俺が困る。」

「じゃあどうすれば?」

「マンションもホテルも嫌ならついて来て。」

波瑠は桜智の手首を掴むと
カフェを出て車に桜智を乗せた。

車は市内を過ぎて郊外に出てどんどん山の方へ登って行く。

「どこに行くんですか?」

「人目につかないとこ。」

桜智は何されるか怖くて黙ったままだ。

波瑠が目的地に着いた頃は日が落ちていた。

そこは何もないただ眺めのいい場所で
街の灯りが上から見下ろせるステキな所だった。

桜智はそれを見て少し緊張が解れた。

「綺麗。」

そして桜智はその場に座り込んで波瑠に頭を下げようとした。

波瑠はビックリして桜智を抱き上げた。

「本気で土下座するつもり?

そんなんで許すと思う?」

「じゃあどうしたら許してくれる?」

「どうしたら許すと思う?」

波瑠は桜智を追い詰めていく。

「車に乗って。」

波瑠が桜智の手を引っ張って車に乗せた。

桜智は逃げ出そうとしたが波瑠に捕まった。

「私をどうするの?」

波瑠は桜智を抱きしめて言った。

「俺を好きになってくれたら全部許してあげる。」

桜智はそんな波瑠を怖いと思いながら
胸が高鳴るのを感じていた。
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