aventure
桜智はルームウェアのまま深夜の街に独りぼっちで立っていた。

部屋には怖くて戻れなかった。

お金も無いし、咄嗟に携帯電話だけ握りしめて外へ出た。

とりあえず真緒に連絡したが
真緒の電話は電源が落ちていた。

鴻の名前が目に入ったが
とても連絡出来なかった。

寒くて震えていると後ろから声をかけられた。

「もしかしてあなたこの前、波瑠と一緒に来た子…?」

「え?」

「どうしたのそんなカッコで…」

それは波瑠の彼女だと紹介された結美だった。

「あの…いきなり申し訳ありませんが…
お金貸してもらえませんか?」

「何があったの?

波瑠に連絡する?」

「あ、いえ…。

先輩に迷惑かけるので…」

「1つ聞いていい?

あなたと波瑠はどういう関係?

お父さんに頼まれたって言ってたけど…」

桜智は何と答えていいか分からなかったが
自分たちの関係を悟られてはいけないと
思いつくまま嘘をついた。

「あの…先輩のお父さんとウチの父が知り合いなんです。」

「ああ、そうなの?

それで?いくら必要?」

「5000円…いえ、3000円でいいです。

連絡先教えてもらえますか?

明日必ず返します。」

結美はお財布から10000円を出して桜智に渡した。

「波瑠のお父さんの知り合いだから信頼して貸すのよ。

お金は波瑠に渡しておいて。
波瑠から返してもらうから。」

そう言って結美は去って行った。

桜智はその10000円で暖かい場所で食事をした。

その夜はスパに泊まって
次の日の昼、誰もいない時間に荷物を持って母親の家から逃げ出した。




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