aventure
「波瑠!待ちなさい!

約束を守らなかったのは悪かった。

でも桜智に罪はない。

桜智はお前じゃなく最初から私を愛してるんだ。」

波瑠はそんな父親を情けなく思った。

「本当に俺の親父かよ?

俺の親父はそんな人間じゃなかった筈だ!

女に溺れて息子との約束も守れない様な…
そんな情けない親父じゃなかったよ!」

波瑠は蔑んだ目で鴻を見ている。

「お前はまだ桜智が好きなのか?

お前が諦めないから、私は桜智を手放せないんだ。

私が桜智と別れたらお前は桜智をどうするつもりだ?」

「俺がアイツを諦めたら親父は桜智と別れるのかよ?」

鴻はそんな気持ちは無かったが
目の前の波瑠は傷ついてボロボロだった。

放っておけば何をするかわからない。

それにもうこれ以上波瑠を傷つけたくなかった。

「あぁ。

お前があの子を諦めると言うなら、今度こそ本当にあの子を手放すよ。」

「本当だな?」

鴻は波瑠の目を見て頷いた。

「凪に誓える?」

そう言われた時はさすがに胸が痛んだが、
鴻は頷いた。

「わかった。

どっちにしろ桜智はもう俺を寄せ付けない。

桜智が俺を選んだとしても、お袋に親父との事を知られてるし…絶対に許してもらえないと思う。

俺は桜智を諦めるよ。

だから親父も桜智を手放してくれ。」

鴻は頷いて波瑠の頰を撫でた。

「わかってる。

桜智のことは金銭的な援助だけにする。」

「ダメだ!

桜智を完全に手放せ!

マンションから追い出して
一人で生きて行かせろよ!

桜智の為にも親父はそうするべきだと思う。」

鴻はそんな気持ちには到底なれないが、
波瑠を落ち着かせるために

「わかった。」

と言った。





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