aventure
3日後、鴻は桜智の住む部屋を見つけて来た。

駅に近く、通学に便利な場所で
ワンルームだが新しく綺麗な部屋だった。

だけど桜智はこれ以上
鴻に迷惑をかけたくなかった。

「鴻さん、もうお金は要らない。

住むところも自分でなんとかする。」

鴻にお金を貰うことは手切れ金みたいな気がして桜智はその好意を受け取りたくなかった。

「でも…これからどうするんだ?

せめて住むところくらい用意させて欲しい。」

「私達は別れたんだからもうお金を貰うわけには行かないよ。

今までの分も働いて自分で稼げるようになったら絶対返すから。」

鴻は桜智の気持ちが嬉しかったが
このまま一人にするのは不安だった。

しかし桜智は頑なに鴻の援助を拒んだ。

桜智は母に連絡をして会うことにした。

「桜智!どうして急に居なくなったの?」

母はあの男が桜智にしようとした事を知らない様だった。

「ママ…あの人は…ダメだよ。

あの人じゃママを幸せに出来ない。」

「あの人…桜智に何かしたの?」

「うん…ママ…あの人は私に…酷いことしようとして…だから逃げたの。

知らなかったでしょ?」

母はかなりの驚いた様子だった。

でも桜智の言葉を信じようとしなかった。

「桜智…本当なの?

ママをあの人と別れさせようと嘘をついてるんじゃないの?」

桜智はそんな母を不憫に思った。

「あの人の事好きなんだね。信じてるんだね。

私よりあの人を信じたいんだよね?

わかった。じゃあもういい。」

そう言って桜智は席を立った。

母は暫くその場所に座っていた。

桜智のことも男のことも信じたかったが
どちらかがウソをついている。

やっと幸せになれたと思っていたが
そのせいで桜智が不幸になっている事を今更思い知った。






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