aventure
「今…なんて言った?」

波瑠は鴻の言った言葉が理解できなかった。

「桜智から逢いたいと言ってきたが…

私はもう桜智とは逢わない。

どうかしてた。

そんなことに今さら気がついた。

桜智は可愛いが…それだけだ。

恋愛に発展することも…
ましてや結婚相手になれる訳でもない。

でも…今のあの子を独りにするのはあまりに残酷だ。

だから…あの子を支えてくれる年相応な信頼出来る男が必要だ。

波瑠…桜智を愛してるんだろう?」

波瑠はそんな話に飛びついて、
喜べるほど単純じゃない。

父親と愛し合った女を引き受ける覚悟はそんなに簡単には決められない。

「結局、桜智が要らなくなったから俺に引き取れって話か…」

簡単ではないことは鴻にもわかっていた。

「そうじゃない。

桜智の事は私だって大切だった。

でも私と桜智では不釣り合いだとよくわかった。」

波瑠は自分勝手な鴻にまた腹を立てた。

何を言っても、許せなかった。

散々弄んで結局最後は捨てるのだ。

波瑠はそんな鴻を軽蔑し、恥ずかしいと思った。

「桜智が暮らすのに必要な金は出す。

でも私はもう側には居られない。

お前がまだ桜智を好きなら二人で幸せになれないだろうか?」

波瑠は決めかねていた。

桜智と付き合えば嫌でもこの父親の影が付き纏う。

母の翠も黙ってないだろう。

それでも桜智が心配で波瑠は様子を見に出かけた。


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