aventure
波瑠はその夜、帰らずに一晩中桜智のそばに居た。

桜智は波瑠の腕の中でぐっすりと眠り
人の温もりを久し振りに感じる。

波瑠はその寝顔を見て
父との関係などどうでもよくなった。

やはり桜智が欲しい。

桜智の心も身体も全てが欲しかった。

桜智の髪を撫でると桜智が目を覚ました。

波瑠は桜智の目を見つめて唇を寄せる。

桜智はそれを黙って受け止めた。

桜智の真意は分からなかった。

それでも今、自分の手の中にいる桜智が愛おしく
波瑠は二度と離さないと決めた。

朝、家に戻って鴻にその事を話した。

「わかった。

波瑠…それでなんだが…

桜智と二人で留学しないか?

場所は2人で決めていい。

お母さんには私から話そう。

お前が言っても感情的に反対するだけだ。」

波瑠は戸惑ったが、このまま父の側に居たら常に2人の仲を疑ってしまうと思った。

留学は波瑠にとってもいい提案だった。

「わかった。

それは親父に任せる。

だけど本当に良いんだよな?

オレが桜智と結婚するって言っても…許してくれるの?」

鴻は暫く考えた。

「お前が本当に好きなら…そうしなさい。

だけど…桜智を嫁として迎える準備はまだ出来てない。」

鴻はそれは無理だとわかっていた。

波瑠も恐らくわかっていた。

桜智が鴻を"お義父さん"と呼ぶなんて考えられなかった。

桜智は凪と重なるほど可愛いとは思うが…
鴻にとっては娘では無く女だった。
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