(※キミ限定)ドキドキさせるの禁止ですっ!
今、保健室には私と荒牧くんの二人だけ。
私は窓際の長イスで、お母さんが迎えに来るのを待っているところで。
荒牧くんは保健委員の仕事で、部屋の真ん中のテーブルで、健康観察版をまとめている。
「…嫌なら、話しかけてこないでください」
「それは無理。
俺、妃恋ちゃんと話したいし」
「……っ」
いつもいつもそうやって……
荒牧くんは、どうせ人のことからかって楽しんでるだけ。
相手にするだけムダ。
「私は別に話すことなんてありません」
フイッと荒牧くんから顔を背けると、イスの下に置いていたカバンから、文庫本を取り出した。
しおりの挟んでいたページをめくり、文字を辿るも……。
「……」