(※キミ限定)ドキドキさせるの禁止ですっ!
「聞こえてるんだろ、返事くらいしてよ」
もちろん荒牧くんの声は聞こえていたけど、文庫本を読んでいるフリを続けていると、キィイとイスが引く音がした。
「ねぇ妃恋ちゃん」
そして目の前にスラッとした影が近づいてくる。
なんでこっち来るの。
来ないでよ……。
「……」
仕方なく顔を上げると、
「やっとこっち見てくれた…」
ドキッ…。
アッシュブラウンの少し長めの前髪から、むかつくくらい整った笑顔が見えた。
左耳のシルバーのピアスが夕日に照らされてきらりと光る。
何でそんな嬉しそうな顔するんの。
ほんと意味わかんない。