図書室の花子さん(仮)
⑴ 一番奥の本棚 右端
放課後の図書室。
今日も私は読書をしながら、グラウンドに想いを馳せる。
「ねぇ、あの先輩だよ!図書室の花子さん。」
「ほんと!? うわぁ、、、美人。」
「読書姿も絵になる〜」
背後で、1年生の女の子達の会話を耳にする。
だから……
私の名前は、花子じゃないってば…!
心の中でそう叫びながら、カウンターへ戻る。
私、日下部 華(くさかべ はな) は、
文芸部に所属する高校2年生。
人より目鼻立ちがはっきりした顔立ちのせいか、昔から"高嶺の花"なんて言ってもらうことは、何度かあった。
ただ、自身にその自覚が皆無であるため、そんな呼び方をされても恐縮してしまう。
どう反応して良いのか分からない。
そうしている内に、気付けば "高嶺の花子さん"という呼び名が始まったらしい。
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