図書室の花子さん(仮)
えええええ。どうしよう。
斎藤くん、この本借りちゃうの?
手紙、挟んじゃってるよ!?
どうしよう。
でも、さっかく借りに来てくれたんだし、こんな機会二度とないかもしれない。
頭をフル回転させるが、
おそらく私は硬直していたのだろう。
「もしかしてその本、難しいんですか?
俺、あんまり図書室来ないんで……。」
と斎藤くんが不安そうに尋ねる。
ああ、やってしまった……!
「だ、大丈夫です!面白いと思いますよ。」
必死に取り繕って、そう答える。
震える手でバーコードを読み、斎藤くんに本を返した。
「よかった、ありがとうございます。」
彼はそう言って穏やかに笑うと、林くんの待つ出口の方へ小走りに駆けて行った。