図書室の花子さん(仮)
⑶図書室の"華さん"
「…急に呼び止めて、ごめん。
私ここ数日、斎藤くんに避けられてるかもって思ったし、今も"怖い"って思われてるのかもしれないけど、もう一度ちゃんと言いたい。
斎藤くんがずっと好きでした。」
震える声が、唇から伝っていく。
私の告白に、斎藤くんが照れたように目を逸らした。大きな手で顔を覆う彼の表情は、少し読めない。
「気持ちは、嬉しい。
けど、なんで……俺? "図書室の花子さん"には、もっと良い人がいるんじゃ……。」
斎藤くんは眉を下げながら、そう告げる。
私はどうして好きな人に、そんな風に思われてしまうのか納得いかなかった。
「そんなことない。何より、斎藤くんにはそんなあだ名より、"日下部 華"を好きになって欲しいの。」
1番伝えたかったことを彼の目を見て告げる。
その言葉に目を見開いた彼は、
「…分かった。
ただ返事は、少し待ってほしい。」
と呟いた。
私は静かに頷く。良いのか悪いのかはまでは分からないが、二人の関係が変化していく、そんな予感がしていた。