図書室の花子さん(仮)

マズイ…いきなり定期落とすなんて。
幸い駅を降りてから数分後に気付いた為、
急いで元来た道を引き返す。

入学式に間に合うといいけど。

焦る気持ちで駅員室を訪ねたが、

「うーん、届いてないねぇ。
この時間は、人通りが多いから。」

嘘……ついさっきだと思うのに。
まだ1回しか使っていない定期を思い出し、落胆する。

「有難うございます。また探してみます。」

入学式のこともあった為、駅員さんにお礼を言って、とりあえず登校しようと踵を返した時、


「あのっ、 もしかしてこれ……!」

坊主頭の長身の男の子が、私に声をかけた。

彼の手が差し出すのは、確かに私の定期で。

「あ!……ありがとうございますっ!!」
大きく頭を下げる。

「「……よかったぁ」」

私の安堵と同じタイミングで、彼が同じ台詞を言う。
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