図書室の花子さん(仮)
よく見ると目の前の彼は、私と同じ制服を着ていた。
「これから入学式?俺もそうなんだけど、また学校で会ったら宜しく。」
そう言って微笑んだ彼は、「ごめん、連れが待ってるから」と、少し先にいる坊主頭の2.3人の元へと行ってしまった。
これが、斎藤くんとの出会い。
以来、私は彼を目で追いかけるようになった。
しかし、高校1年のクラスは異なり、野球部のマネージャーでも何でもない私は、彼を密かに図書室で眺める日々が始まった。
そんな日々が半年続いた1年前のある日。
「斎藤くんと関わる機会ないなぁ…。」
図書室で溜息をつく私の横で、
幼馴染の悠里(ゆうり)が苦笑する。
「これだけ毎日眺めてるなら、そろそろ話しかけたらいいのに。」