図書室の花子さん(仮)

「図書室に本借りに来たりはしないの?」

項垂れる私に、悠里が尋ねる。

「それがあれば、今こんなに凹んでないよ…」

まだ図書室に来てくれたなら、放課後は文芸部員(主に私)がカウンター作業を担当している為、接点あるかもしれないんだけど。

「でもさ、野球部の誰かは来るでしょ?」

それは、さすがに来る。
誰だっけ、特にあのお猿っぽい子。

「林くん……?かな。よく来る。」

斎藤くんと毎日部活できる人なんだと思うと、羨望のあまり、自然と名前は覚えてしまった。

「あぁ、林か。じゃあ、今度あいつに斎藤くん連れて来てもらったらいいじゃん。」

「え、それもハードル高いって。
絶対怪しまれる……。」

頭を抱える私に、

「はぁ……もうじゃあ、ずっと眺めるだけで我慢することね。」

悠里は、淡々とそう言って、
先に帰ってしまった。
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