Miss*You










「それでねっ、先生がさぁ……」




今日は珍しく琉惟くんが電話を繋いでくれている。


男の子らしく面倒くさがり屋で連絡もそう頻繁には取り合わないけれど。


今までの予定キャンセルの分の穴埋めなのかな?


その気遣いだけでも私は充分嬉しかった。




「うんうん」





声を聞くことすらあのキャンセルの電話以来。


鼓膜を震わせる琉惟くんの声はとても甘くて落ち着くから好きだ。


私は琉惟くんの声が聞きたくて沢山話をしていた。



会えない時間があるからこそ、この時間がすごくかけがえのないものだと痛切する。




「それからー、えっとね!
……って琉惟くん?」


「……」





ふと向こうの音がぷつりと途絶えてやけに静かになる。


呼び掛けにも返事は無くて。





「……も、もしかして……寝ちゃった?」





聞けば今は二次試験に向けて一番忙しく立て込んでいて勉強も大詰めらしい。


寝る時間も削ってるって聞いてたし……


申し訳ないことしちゃったな。



もう少し、もう少しだけ話していたかった思いもちょっぴりあるけれど……




「仕方無い、仕方無い……ね」





後ろ髪を引かれる思いで通話を切るボタンに触れた。


そうだ。

仕方無いんだ。


“付き合っていても意味なんてあるの?”

時折顔を覗かせる我が儘な自分はそう問い掛けてくる。


その度に私は答えを見送っては見て見ぬふり。

嫌な自分に蓋をしてしまう。




「……はぁぁ。
寝なきゃなぁ……」



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