コガレル ~恋する遺伝子~
もし会えたとして、圭さんに何を言うの?
もう一度拒絶されたら、私はどうなるんだろう…
何時からここに立ってるのか、どれくらい時間が経ったのか分からなかった。
辺りは急に暗くなった。
それは日没のせいじゃない。
私の頭上でも、黒い雲が太陽の光をとうとう遮ってしまったから。
薄暗くても分かった。
たった今、エントランス前に停まった一台の白いステーションワゴン。
すぐに車が走り去ると、そこに残されたのは圭さん。
キャップを目深に被った圭さんが、何かを話しかけた。
一緒に車から降りた成実さんに。
距離を縮めた成実さんは、圭さんの首に腕を回して頬にキスした。
儚い願望がそう見せたのか、それは挨拶程度の軽いキスだった。
成実さんが顔を離したその時、向かいの歩道の私と間違いなく目が合った。
でもすぐに逸らされた視線。
首に回された腕は、今度は圭さんの腕に巻きついて、オートロックの中へと消えて行った。