コガレル ~恋する遺伝子~
立ち尽くすしかなかった。
さっき私が拒絶された自動扉の内側に、二人は簡単に入って行った。
またどれくらいの時間が経ったんだろう。
…夕飯の支度をしなくちゃ。
もう帰ろう、そう思った時エントランスから成実さんが出てきた。
成実さんは左右を確認すると、一直線に私に向かって歩いて来た。
目の前で立ち止まると腕を組んだ。
「私ずっと、高校生の頃から圭が好きなんだから。
もう、ここには二度と来ないで。消えて!」
威圧的な姿勢と言葉とは裏腹に、いつか屋敷を訪ねて来た時のような勝気な表情は見られなかった。
それでも言いたいことは言い終えたのか、肩のバッグをかけ直すと颯爽と歩き出した。
成実さんの背中は、繁華街の中へと消えて行った。