コガレル ~恋する遺伝子~
***
羽田に向かう車の中。
どういう訳か涌井が送ってくれた。
タウン誌を知ってからようやく10日後に、どうにかもぎ取ったオフは3日間。
無条件で、とはやっぱり女史問屋が卸さなかった。
オフを前借りとして、この先数ヶ月は休みナシ、文句ナシで働くことを誓わされた。
オフ中にハメを外すことも厳禁された。
この10日間を思えば、それくらい容易い。
何度、あのタウン誌の編集部に電話をかけようとしたことか。
弥生は常勤なのか、たまたまあの号に携わっただけなのか。
電話して、探してることがバレたら逃げられるかも知れない。
忍耐力を試される10日間だった。
空港に到着して玄関前に車を横付けすると、涌井が言った。
「くれぐれも問題を起こさないよう釘を刺して来て、って女史が。
伝えましたから俺は」
「ハイハイ」
「それから、これは俺から」
涌井は身体を伸ばすと、後部座席の茶色い封筒を掴んだ。
渡されたB5サイズより小さい封筒。
振ってみると中で何かの箱が動いて、カスカスと音を立てた。
ガムテで封がされていて、中身は分からない。
「何これ?」
「一人っきりで淋しくなったら、開けてみて」
「ゲート通れる?」
「通れない物渡したら、女史に殺される」
物はともかく、送ってくれた礼を言うと車を降りた。
涌井が片手を挙げてから発進させたのを見送った。
間もなく搭乗できる。
封筒をカバンに詰め込むと、玄関を入った。