コガレル ~恋する遺伝子~
まったく、何なんだよ。
勘弁してくれよ、疲れて帰って来てんだから。
リモコンでゲートを開けて、取りあえず車を中に入れた。
奥にきちんと駐車するのは後だ。
車を降りて、門の前で倒れてる女に近寄った。
膝をついて、そいつの肩を揺する。
「おい、大丈夫か?」
ゆらゆら揺らしても返事はない。
でも、この揺れが不快なようで眉をしかめた。
意識はあるみたいだ。
20代?
柔らかそうな髪が頬にかかってる。
俺の人差し指が勝手に頬をなでて、それをどかした。
知らない女。
目を閉じてるけど、美人なのが分かる。
七分袖の青のストライプのブラウスに、紺色の広がるスカート、汚れのない白い靴を履いてる。
服装もきちんとしてる。
何しに来た?
どうしたらいい?
とりあえず首の後ろから俺の腕を差し入れた。
上半身を起こしてやる。
それでもやっぱり目を開けない。
このままここで放っておいたら、事故にあったと思われるだろう。
いや、逆にこれから轢かれる可能性だってある。
救急車を呼ぶにしても、ここで待ってちゃ目立ちすぎる。
俺は背中を支えてるのとは反対の手を、転がってる青いバッグの持ち手に通した。
そのまま腕を膝裏に通して、両手で女を持ち上げた。