コガレル ~恋する遺伝子~
件の熊本タウン誌に載ったことが事務所にバレた。
呼び出し喰らって事務所に顔を出すと、ネチネチと女史の説教が始まった。
遠くの席からお気の毒様、という視線を投げて寄こす涌井を恨めしく睨んだ。
休みはないし、腹は空いたし、この後社長の説教も聞かなきゃならない。
何もかも投げ出したい気持ちも頭をもたげる。
それでも腐ることはしない。
この世界に深く身を埋めることに決めたから。
与えられた仕事に真摯に向き合って、自分の置かれる立場を確固たるものにする。
周りに俺を認めてもらって、弥生と生きるのを静かに温かく見守ってもらえることが今の理想だ。
説教の第一ステージをクリアすると、社長室に女史と共に出向いた。
やっぱりラスボスは強かった。
代表取締役社長はキリリと眼光鋭いナイスミドルだ。
これだけのモデル、タレントを抱える事務所の経営者。
俺なんか数える程しか会話した記憶がない。
社長は
「ここで真田を許してしまえば、他の所属タレントに示しがつかない」そう言った。
今、撮影中の映画は最後のイベントまで参加させるとして、その後の決まってる仕事を後輩に割り振るそうだ。
俺は干される、ってこと。
期間は知らない。