コガレル ~恋する遺伝子~



 編集部に帰ると何やら夢が怪しかった。
 カクカク歩く姿はまるでゾンビだ。

 弥生さんも異変を感じつつも、笑いを堪えてる節が見える。

 夢はゾンビのまま、美女弥生を感染させるかの如く後を追った。

 もう止めろ夢…
 耐えられない。
 弥生さんもとうとう吹き出した。

 さっき一度、“真田 圭”とつぶやいてたけど、もう一度その名前を呼んだ。

 夢にはここ数年、真田ブームが来てる。
 だから、あぁ、またかと。
 弥生さんは、真田圭にあまり興味がなさそうなのに夢は構わず語りかけてる、いつも。

「…真田さんがどうしたの?」

 本日二度目の真田圭の名前が出た時、珍しく弥生さんが反応を見せた。

「居ます」

「います?」

 夢が指差したのは会議室とは名ばかりの物置室。
 会議なんて、年に数回あればいい方。

 そこは今、ブラインドが下りて中は見えない。
 夢の奴、『居ます』って、妄想もここまで来たか。
 良くてソックリさん、最悪、ポスターか等身大パネルとか?

 弥生さんの後を追って俺もドアから中を覗いた。

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