コガレル ~恋する遺伝子~


「ホントだ、真田圭だ」

 本人を目の前にして、お茶の間感覚で呼び捨てにしてしまった。
 
 どうかそれを許して欲しい。
 こんな状況、とても現実とは思えないだろ?
 夢のゾンビ化の理由も今なら理解できる。

 真田圭はハンパないオーラを放ってそこに座ってた。
 一度チラッと俺を見たけど、その後の視線は完全に弥生さんにロックされてた。

「なんで、こんなとこに?」

 俺に話しかけるなオーラを醸し出してる真田圭。
 目の前の弥生さんは首を横に振った。

 真田圭様はどうやら観光したいらしい。
 女子共の憧れに誘われてるのに、回りくどく断る弥生さんはチャレンジャーだった。
 攻守せめぎあう中、挙句には俺まで巻き込まれた。

「編集長、今日は仕事が終わった後、約束があるんです、ね、冬馬君?」

 仕事が終わった後?
 何かあったっけ?
 もしかして、さっき海で話したアレか。
 でも、アレはいつもの通り断られた認識だったけど?

 しかしながら弥生さんのウルウルとした瞳で「ね、」と言われて、否定できる男がこの世にいるだろうか?

「ん、あぁ、夕飯奢る約束ね」

 哀しい男の性だ…
 この瞬間、真田圭を敵に回したことは間違いない。

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