コガレル ~恋する遺伝子~




 次の日、突然ドアを開けられて准に起こされた。

 『ノックくらいしろ』
 
 って、かつて何回も言ったけどこの通り。
 もう面倒だから、兄は何も言わない。

 准が言うには、親父が降りて来い、って呼んでるらしい。
 枕元のスマホを見たら、7時を少し過ぎた頃だった。

 あいつも起きたのか…?

 制服でリュックを片方の肩にかけた准が、用件だけを伝えてドアを閉めた。
 俺ものっそりと起きて、遅れて後を追う。

 階段を降りて正面が玄関、左へ入るとリビング。

「もしかして、新しい家政婦さん?」

 先にリビングに入った准の話す声が聞こえた。

 ずっとうちに通ってもらってる家政婦がいる。
 俺らの母親が死んですぐだったから、もう15年以上になるか。
 年齢も60を過ぎて、そろそろ引退を考えてるらしい。

 親父が准を紹介してる間に、俺もリビングへ足を踏み入れた。
 葉山さんとやらは、起きてた。
 親父と准のやり取りにクルクルと表情を変えてる。

 准の後ろから現れた俺に気づくと、目が合った。
 やっぱり美人だった。
 化粧してんのか分からないけど、朝からパッチリ目だ。

 まぁ、あんだけ爆睡すればスッキリ目覚めもいいんだろうが。
 口元を見れば、唇は厚過ぎず、薄過ぎず…口紅のCMに出られそうだ。



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