コガレル ~恋する遺伝子~


 頼まれた物をすべて買い終えた頃には、雨足が強くなってた。
 片手に傘、反対の手に買い物の荷物を持ちながら、ふと自宅の雨漏りが心配になった。

 さっき寄った八百屋のBGMで流れてたラジオ。
 関東はもう間もなく梅雨入りだそうだ。

 きっとあそこにはもう住めない。
 緊急事態に雨風をしのげるだけじゃなく、あんなに立派で快適な屋敷に住まわせてもらえるなんて。
 専務に感謝するべきなのは重々分かってる。

 あの変な条件さえなければ、気兼ねなく家政婦できるのに…

 それでも置いてもらうと決めた以上、言われたことは守らないと。
 そう考えた時、急に荷物を持つ自分の手が軽くなった。

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