コガレル ~恋する遺伝子~
エコバッグの持ち手に私の手ともう一人、誰かの手が並んだ。
高い位置から引き上げるその手のおかげで、私の腕が緩んで軽くなった。
「助かった!」
傘を傾けて隣をのぞき込むと、それは准君だった。
無言で促されて、完全に荷物は准君の手に渡ってしまった。
「弥生ちゃんが見えたからさ、」
学校から帰って駅に降り立った准君。
傘がなくて、そこのコンビニで雨宿りしてたって。
ちょうど通りがかった私を見つけて、追いかけてきたそうだ。
「お帰りなさい」
傘をかざしてあげると准君は、荷物を反対の手に持ち替えて今度は私から傘を取り上げた。
「うん、ただいま。という訳で、相合い傘でお願いします」
朝はからかわれたけど、准君なりに緊張をほぐしてくれたのかなって今なら思う。
駅を背にすると、傘の柄を中心に並んで歩き出した。
「もう、買い物終わったの?」
「うん」
「今日の夕飯、何だって?」
そう聞きながら、手に下げた荷物の中身をさらっと確認した。