コガレル ~恋する遺伝子~



「どおりで重い訳だ」

 准君が言ってるのは、きっとスイカのこと。

「見てたら、どーしても食べたくなっちゃって」

 さっき八百屋で1/4カットされてるのを買った。
 和乃さんに頼まれた訳じゃないから、自分の財布から支払って。

「准君はスイカ、好き?」

「好きだよ。弥生ちゃん、塩かけるタイプ?」

「ううん、かけない」

「俺も。でも、親父はかける人。

知ってた?」


 一瞬、試されてるのかと思った。
 専務との関係を何か疑ってるのかと…


「……知らなかった」

「でしょ。で、今日の夕飯何だっけ?」

 また荷物の中を物色し始めた准君。
 どこにでもありがちな会話、多分変な駆け引きではなかったんだと思う。

 その後は今朝初めて会ったことは忘れてしまうくらい、まるで姉弟のような会話を交わしながら家路に着いた。


 この時はもちろん知らなかった。
 准君なりの苦悩があったって。

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