コガレル ~恋する遺伝子~


「うちはよく見張られてるから、言動には注意して。家政婦、と答えても葉山君じゃ恐らく信じてもらえないだろう」

 一体誰に見張られて、誰に何を聞かれるの?

「…家事に慣れたら、なるべく早く仕事と住まいを探しに行きます」

 あまり深くこの家族のプライベートに関わらない方が良い気がしてきた。
 私は私のやるべきことをしっかりこなそう。

「しばらくの間、ご厄介になります。よろしくお願いします」

 私が立ち上がって頭を下げると、専務は頷いた。

「ところで専務、スイカ食べませんか?」

「スイカ? あるなら、もらおうか」

 さっき准君と食べたら、今季初のスイカは当たりで、甘くて美味しかった。
 キッチンで食べやすくカットして運んだ。
 もちろん食卓塩も添えて。

 隣で見てたら、准君の言った通り専務は塩をかけて食べ始めた。
 私も准君も塩はかけない、って言ったら

「食べてみたら?」塩のかかった一切れを渡された。

「うん、やっぱり、かけない方が美味しいですよ」

 そんななんでもない話をしてるところに、圭さんが帰ってきた。
 リビングに顔をのぞかせたからスイカを勧めたけど、「今はいらない」って上に行ってしまった。


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