コガレル ~恋する遺伝子~
【容疑者Kの内緒】side K
昼から撮影があって、終わったのは22時。
今日は朝から誰かさんの荷物運びもさせられたし、流石に疲れた。
スタッフさんに挨拶したら、さっさと現場を後にして真っ直ぐ家路に急いだのは、身体が疲れてるからだ。
だな、そうに違いない。
ガレージに車を停めた。
親父の車はなかった。
まだ帰ってないのか、飲んでタクシーでご帰還なのか。
アプローチを歩いて扉を開けたら、玄関はリビングから洩れた淡い光で照らされてた。
そこに妙なくすぐったさを覚えた。
帰ったら家の中が明るいのって、ちょっとした癒しだな。
忘れてたわ、この感覚。
うちは皆、用がない限り自分の部屋にこもりがちだから。
でもそんな些細なぼんやりした感動はすぐに消え失せた。