コガレル ~恋する遺伝子~



 日が暮れて家に帰ったら、玄関まで割り下の匂いが漂ってた。

 冗談半分ですき焼きが食べたいと言ったのに、本当に作ったみたいだ。
 昼間の会話を思い出して、フッと一人可笑しくなった。

 部屋に上がる途中の二階で、ちょうど風呂から上がった准と出くわした。

 そのタイミングで、ラインの聞き覚えのある通知音が聞こえた。
 でも俺の音とは違う。
 准のスマホだ。

 准はタオルで頭を拭きながら、片手でスマホを操作した。

「飯だって」

 飯?
 …ってことは、相手は葉山さんか。
 こいつら、いつの間にライン交換してやがる…

 俺の心の中のツッコミは届くはずもなく、准は何事もなかったように下へ降りて行った。

 夕飯のすき焼きで葉山さんをイジリ倒したのはきっと、悔しかったからじゃない。
 多分ね。

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