コガレル ~恋する遺伝子~


 “期待” は “現実” に変わった。

 晒された肌も、選ばれた人間しか知りえない形も、色も…
 首を少し傾けて無防備に湯の中で眠る姿は、言葉を失うくらいに綺麗だった。

 もう何分も、何十分もの時が流れたように感じた。
 でも実際はシャワーを出して止めてから今この瞬間まで多分、数十秒の出来事。

 葉山さんの瞳が開かれた。
 ガラス一枚隔てて、絡み合った視線。

 叫ばれるかも知れない。
 准がバスルームの前を通ったらアウトだ。

 俺は人差し指を唇の前に立てた。
 “内緒” のサイン。
 それから先に視線をそらしたのは俺の方。
 シャワーブースを出るとバスタオルを腰に巻いて部屋に戻った。

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