コガレル ~恋する遺伝子~



 台本をさらに読み進めてどれくらい時間が経っただろう。
 気づいたら同じ行を永遠ループしたり、共演者のセリフを覚えようとしてた。

 台本を置くと、壁の時計に目をやった。
 あれから一時間くらい経ったのか。

 このままではお互い気まずいのは目に見えてる。
 話をしよう。
 そう思い立って、葉山さんの部屋のドアをノックした。

 返事はなかった。
 ドアを開けて電気をつけた。

 いない。
 ついでに廊下の奥のバスルームも確認してみる。

 やっぱりいない。
 一階か?

 階段を降りて、リビングに入った。
 電気をつけて奥のキッチンまで進む。

 いない。
 まさか、こんな時間に外に出たとか?
 下にある公園は茂みが多くて、夜は誰が潜んでいるかも分からない。
 女性はこの辺りを、夜一人でフラフラしないのが得策だ。

 ここにきて少しの焦りを感じた。


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