コガレル ~恋する遺伝子~
なんでも私が離職してから、営業課のフロアに突然、専務が現れたそうだ。
こちらから出向くか、会議室で集まるのが常で、専務が自ら足を運ぶことは滅多にないから皆驚いたらしい。
その目的は一、二、三課の課長、それに部長が個別に呼ばれての抜き打ち聞き取り調査。
パーテーション越しに切れ切れに聞こえた会話から想像するに、一課が起こした利益の損失を、契約社員の首切りで補填することにしたらしい。
「しかも、杉崎課長がね、」
杉崎課長は、個別聞き取りの時に
『 仕事ができる大事な部下を切るなんて、人事と上層部は無能だ 』って啖呵を切ったようで…
きっと私の契約解除のことだ。
課長が自分の立場を危うくする必要はないのに。
「でも、変なの」
「どうしたんですか?」
今回の損失のせいかどうか、営業部部長は地方へ異動になったそうだ。
「で、新しい部長が、」
ここでたっぷりと時間を置いて焦らす綾さん。